特集 01 意外と知らない不動産投資の歴史と今

Vol. 1

不動産、それは世界最古の投資

本格化する総投資時代

「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」もすでに定着の兆しを見せている現代の日本社会。時代の変化に伴って、「自分の未来は自分で守るべき」という考え方も深く浸透し始めています。ここでの「未来」とは「経済的自立」と言い換えても良いでしょう。退職金や公的年金だけに頼るのではなく、「自分の資産を守り、できれば自分で増やしたい」という考え方をお持ちの方も少なくないと思います。こうした社会状況や様々な法的整備もあり、投資全般に対する注目が集まっていると考えられます。まさに今、日本は一億総投資家時代が本格化する時期にあるのではないでしょうか。

最も歴史ある投資手法は「不動産投資」

一口に投資と言っても株式、債権、投資信託、暗号資産、金やプラチナなどの現物資産など、その手法は実に多岐に渡ります。では、最も歴史の長い投資手法は一体何だと思いますか? それは「不動産投資」だと言われています。不動産投資の歴史は、遥か古代ギリシャにまで遡り、紀元前2,500年頃にはすでに「不動産」や「抵当権」の概念が存在していたと言われます。その頃の日本は未だ縄文時代。古代ギリシャ人の先進性には驚くばかりです。

現代では一般的となった投資手法のひとつである「株式投資」は、欧州列強が植民地開拓競争に明け暮れた大航海時代に発明されたもので、1602年のオランダ・東インド会社設立に起源を持ちます。不動産投資が生まれてから、実に4,000年も後のことです。東インド会社が行う貿易事業には多額の資金が必要であり、会社設立資金の出資を募る新たな手法として株式が導入されました。当時の航海は自然災害や海賊による掠奪などの危険も多く、出資者にとっては自身の出資額以上の責任を負わない有限責任であることも利点でした。事業全体のリスクを株式によって分散したのです。後に株式自体を売買する株式市場がアムステルダムに設立され、本格的な株式投資の仕組みが整うことになります。

暗号資産に至っては、2009年にサトシ・ナカモトなる正体不明の人物(もしくはグループ)による論文に基づいてビットコインが誕生したのが始まりなので、まだわずか15年の歴史しか持ちません。歴史が浅い分、その可能性も無限大と考えられ、未だ見ぬ大きなリターンに対する投資家たちの期待が加熱している状態です。

不動産投資に話を戻しましょう。不動産投資の概念が生まれた当時のギリシャでは、土地の所有権を示すために石杭が使われていました。石杭で囲った範囲を自分の土地として規定し、その面積に対して貸付を受けていたと言います。現代で言う抵当権を設定していたわけです。石杭には所有権と合わせて、抵当権者や債権額も刻まれており、現代につながる不動産投資の基礎概念がすでに確立されつつあったことをうかがわせます。「土地は資産である」という価値認識は、この時から始まったと考えられます。

未だに世界最古の投資法は

経済学者のトマ・ピケティはその著書『21世紀の資本』で「r>g」という不等式を用いて「資本収益率(r)は経済成長率(g)を上回る」ことを示しました。簡単に言えば、土地や株などの資本を持つ人は、労働収益だけの人に比べてより豊かになっていく可能性が高いことを示唆しています。この傾向は相続によってさらに強化され、格差拡大につながる可能性があるとも指摘されますが、不動産を持つことは、より早く、より豊かになるための有効な手段であることが、経済学の観点からも支持されていることがわかります。数ある投資手法のなかでも不動産投資の歴史は圧倒的。最も古いこの投資法は、それだけ信頼性が高いと考えて良いのではないでしょうか。