DE&Iが進むと何が変わる?
DE&I:それぞれの意味を理解しよう
近年、日常の文脈のなかでも「DE&I」という言葉に触れる機会が増えたと実感している人も多いことでしょう。INVALANCEでもDE&Iへの取り組みを積極的に推進しています。一例として、2024年12月、INVALANCEは、車いすラグビーJWRF強化指定選手である横森史也(よこもり・ふみや)選手とのアスリート社員契約を結びました。誰もが暮らしやすい不動産の創造を目指すINVALANCEにとって、障碍や困難を抱えた人の意見やインサイトを取り入れることは事業上も大きな意味を持ちます。多様な視点を尊重することが、今までにない新しい価値を生み出すことにつながると信じています。
DE&Iとは、「Diversity(ダイバーシティ)」「Equity(エクイティ)」「Inclusion(インクルージョン)」の3つの言葉の頭文字を取った略語。多くの人が参加して日々営まれる組織や社会において、様々な背景を持つ人々を公平に扱い、お互いを尊重し、敬意を払いながら、それぞれが自分らしく活躍できる環境構築を目指すものです。DE&Iは単なる理念として一人歩きさせるのではなく、ある集団に実際に取り入れることで、個人の可能性を最大限に引き出し、持続可能な発展につなげるという実践の視点が重要になります。
ではまず、それぞれの言葉の定義を見ていきましょう。

DE&Iが求められる現代社会
DE&Iが重視されるようになった背景には、歴史的な差別や格差の是正の必要性、グローバル化の進展による変化、価値観の多様化が大きく関与していると考えられます。
人類の歴史は、常に差別と偏見と隣り合わせでもありました。人種差別やジェンダーの不平等など社会問題が長く続いてきたことが、DE&Iの必要性を認識することにつながりました。アメリカでは1964年の公民権法をはじめとした法整備が進み、雇用機会の平等を求める声が高まりました。ジェンダーの視点から言えば、1970年代以降、女性の社会進出の加速もあり、企業経営層や政治分野における男女格差解消が急務となりました。近年、特に2000年代以降になるとLGBTQ+の権利擁護も進み、個人の性的嗜好の多様性を尊重する動きが広がっていることは、よくご存知のことでしょう。
2000年代以降の急速なグローバル化により、異文化を持つ人々と共に働く機会が増えたこともDE&Iの推進に影響を与えています。異なる文化的・社会的背景を持つ仲間との協業を避けては通れない現代社会では、異文化理解や多様性の尊重を大切にすることが、組織の競争力向上に直結することがわかってきたのです。多国籍企業などでの取り組みはその典型例でしょう。また、国や地域によっては移民や外国人労働者の増加により、社会全体としてインクルーシブな(包摂性のある)あり方が求められるようにもなってきています。
企業の価値観の変化もDE&Iを推進する要因となっています。従来の企業経営では同質性が高いことに大きな価値が置かれ、とりわけ日本ではその傾向が顕著に見られました。しかし、多様性に富んだ組織やチームの方が創造性や問題解決能力が高まるといった研究結果が報告されると、多くの企業でDE&Iを重視する方向に舵が切られるようになっていきました。特に、テクノロジーやイノベーションといった最先端のアイデアが求められる分野では、偏りのない視点や属人的な経験が新しい発想を生み出す土壌になります。生活者の価値観の広がりも顕著な現代では、社会的責任(CSR)やサステナビリティといった観点から企業が評価されることも多く、多様な視点を踏まえた企業運営にもDE&Iは欠くことのできない考え方となっているのです。

DE&Iが進めば社会とビジネスが変わる
DE&Iが推し進められることは、社会全体とビジネス、その両面で大きな利点をもたらします。
まずは社会。多様な人々が公平に活躍でき、そのままの自分で受け入れられる環境が整うことは、貧困や格差の縮小につながるでしょう。例えば、障碍のある人やLGBTQ+コミュニティに対する理解が深まることは教育や就労の機会を増やし、社会全体の生産性が向上します。また、多文化共生が進むことで異なる価値観を尊重し合う社会の機運が醸成され、立場や背景などに起因する対立や差別を軽減します。さらには、現時点よりも多様な人が社会の意思決定に関与できれば、公平かつ包括的な政策の実現を後押しすることにもなるでしょう。DE&I推進によって得られるであろう恩恵は、社会の至る所で見つけられるはずです。
ビジネスで言えば、DE&Iの推進により企業のイノベーションが加速します。また、異なるバックグラウンドを持つ人々が協業することで多角的なアイデアが生まれ、新たな商品やサービスの開発につながります。特にグローバル市場でビジネスを展開する企業にとっては、多様な視点を持つチームの方がより幅広い社会のニーズを受け止めて柔軟な対応ができるため、結果としてチームや企業の競争力が高まるでしょう。また、DE&Iを推進する企業ではブランド価値向上も期待できます。エシカル消費の広まりもあり、社会課題に高い意識を持つ生活者ほど、DE&Iの推進に積極的な企業を選ぶ傾向にあるからです。多様な人材が働きやすい環境を整えることは、企業の競争力に直結する優秀な人材の確保・定着率向上にも必然的につながってくるでしょう。

ここまで見てきたように、DE&Iは社会に存在し続けてきた根深い不平等を是正するだけではなく、VUCA(Volatility:変動性 / Uncertainty:不確実性 / Complexity:複雑性 / Ambiguity:曖昧性)と言われる現代社会のさらなる発展と持続可能な成長を支える基本的スタンスなのです。