特集 11 マンション管理の「守り」と「攻め」 ~資産を、ずっと大切に~

Vol. 03

信頼を「可視化」し、資産の未来をデザインする

マンション管理の真価は、トラブルが起きていない「平時」にこそ宿ります。

第1部の物語、第2部の構造解説を経て、最終章となる第3部では、資産価値の最前線に立つビルディングマネジメント部の深部に迫ります。 

2026年4月の改正区分所有法施行を控え、業界全体が「意思決定の不全」という大きな岐路に立たされる中、私たちはテクノロジー(DX)をいかに「人の判断」を加速させるための武器に変えているのか。 「管理会社はどこも同じ」という既成概念を打ち破り、一度離れた顧客すらも呼び戻す「攻めの管理」の正体。現場を熟知するビルディングマネジメント部の山﨑泰志が語る、インテグリティ(誠実さ)を実装するための組織変革と、AIがもたらす透明な未来への挑戦を紐解きます。

Q. 現在、担当しているマンションの規模と業務内容を教えてください。

現在は150棟の区分所有マンションと、11棟の一棟管理物件を担当しています 。主な実務は、管理組合の健全な運営をサポートする経営支援や、建物の物理的な価値を保つための維持管理です 。

具体的には、年1回の通常総会の開催に向けて議案の策定や進行管理を行い、合意形成をサポートしています 。また、長期修繕計画の策定や設備点検などを通じて、将来にわたる資産価値の向上に努めています 。

さらに最近ではDX推進にも力を入れており、アプリやLINEを活用した情報配信を行っています 。これにより、遠方にお住まいのオーナー様でも手軽に出席率や議決権行使に関わっていただける環境を整え、ステークホルダーの皆様の安心と満足を守るのが私の役割です 。

*2026年1月時点

Q. 投資用マンションならではの管理上の難しさには、どのような点がありますか?

投資用マンションのオーナー様は物件から離れた場所にお住まいであるケースが多く、物理的な距離が、管理運営への参加に対する心理的なハードルとなっていました。

そこで当社では、紙媒体からアプリへの移行を推進しています。LINE通知を活用したリアルタイムな情報共有により、遠方にお住まいでも物件を身近に感じていただける環境を整え、意思決定のスピードと参加率を大幅に向上させています。

年1回の総会では組合員の50%以上の意思表示が必要となり、これが満たされない場合は定足数不足により総会が不成立となり、「適正な意思決定ができない(法令・規約違反の状態)」というコンプライアンス上の問題にもつながるため、重要なテーマです。

DX化の利点として、LINE通知によるリアルタイムのリマインダー配信を行い、遠方にお住まいのオーナー様であっても、常に物件の『今』を共有できる仕組みを整えることで、距離を感じさせない資産運用の伴走を実現しています。

Q. 組織的な課題はどのようなものでしたか?

事業の成長スピードに対して、管理実務における「型」やオペレーションの整備が十分に追いついていなかった側面がありました。創業当初は建物管理の専門経験者がいない中でスタートしたため、現場ごとの判断や担当者のスキルに依存する部分が多く、業務の進め方や精度にばらつきが生じやすい状況でした。

その結果、議事運営や会計処理などの実務において、後から改善が必要だと分かるケースもあり、オーナー様からのご指摘をきっかけに見直すこともありました。現在は、こうした課題を組織として正面から捉え、改善を進めている過渡期にあります。

またDXの取り組みとして、業務プロセスをデジタルツールで標準化し、属人的な判断に頼らない体制づくりを進めています。これにより、ヒューマンエラーの低減だけでなく、社内に蓄積された知見を全社で共有し、安定した管理品質を継続的に提供できる仕組みを構築しています。

Q. オーナー様から多い相談内容は何ですか?

物価高騰を背景とした将来の管理費・修繕積立金への不安、情報の透明性と即時性へのニーズです。

段階増額積立方式により修繕積立金が年々上昇することへの懸念、再委託先(清掃、設備点検)の人件費高騰による管理費値上げへのシビアな反応も多いです。収入増加策として駐車場シェアリング、自動販売機、アンテナ基地局設置などを提案しています。

Q. AI・テクノロジーの活用状況は?

長期修繕計画書の作成にAIを活用しています。物件の管理状況をアプリを通じて写真付きで配信し、情報の可視化を推進中です。今後はさらなるDX化の推進として、自社設計のノウハウを活かした高精度なAI修繕コスト予測の実装を目指しています。自社で設計を行っているからこそ、建物構造や仕様に基づいた緻密なコストシミュレーションが可能です。

これにより、将来的なコスト負担の透明性を極限まで高め、オーナー様の積立金最適化と管理組合の迅速な意思決定をサポートします。テクノロジーを通じて信頼を可視化し、より安心度の高い資産運用環境を構築してまいります。

Q. テクノロジーの活用によって、オーナー様への「向き合い方」はどう変わっていくのでしょうか?

テクノロジーの目的は、社内効率化ではありません。オーナー様を待たせないためのスピードと安心を実現することです。

そのために、従来の「現場→管理職→オーナー様」という確認フローを見直します。事務・確認作業はAIに任せ、フロント担当者が現場で即座に判断・回答できる権限と情報を持つ体制へ。持ち帰らず、その場で応える。それが信頼につながります。

現場の情報はスマホから即時にシステムへ集約し、対応プロセスを可視化します。この“透明性”こそ、遠方に住む投資オーナー様にとって最大の安心材料です。さらに、個人の経験に依存しない仕組み支援型の管理へと進化させます。誰が担当でも高品質なサービスが受けられる体制を構築し、「今のインヴァランスなら」と再指名いただける管理を目指します。

Q. ビジョンに掲げる「オーナー様ファースト」を具現化するために、どのようなパートナーシップを築かれているのでしょうか?

私たちの強みは、顧客ファーストを徹底したワンストップ体制です。

設計・販売・建物管理・賃貸管理までを一気通貫で担うことで、資産価値の維持という「安心」と、手間をかけさせない「快適さ」を同時に実現しています。

その理由は、自社で設計した建物を自ら管理しているからです。構造や仕様、これまでの維持管理の経緯を熟知しているため、長期修繕計画の精度を高く保ち、将来的なコストのブレや想定外の負担リスクを抑えることができます。また、窓口が一本化されているため、住所変更や口座変更などの手続きも分断されず、オーナー様に余計な負担をかけません。

さらに私たちは、単なる事務代行では終わりません。突発的な浸水被害などが発生した際も、保険申請だけでなく、保証内容の整理や今後の修繕・運用における選択肢まで提示します。

「判断に迷わせないこと」「不安を一人で抱えさせないこと」。

安心と快適の両面から支えることで、私たちは代行業者ではなく、オーナー様の意思決定を支える“伴走者”であり続けたいと考えています。