iMAG

不動産が好きだから、
伝えられる価値がある。

# 17

価値を、動かし続ける

資産価値は、"運用"で決まる。

Vol. 3

信頼は、対応ではなく”姿勢”から生まれる

二人が語る、賃貸管理という仕事。

簡単に正解を出せない仕事だからこそ、賃貸管理には相手の立場を考え続ける姿勢が求められる。日々どう向き合っているのか。フロントを担う平野さんと、判断の承認者である戸部さんに話を聞いた。

前号のVol.02では、資産価値が日々の運用によって動かされ続けているという構造を解説した。その運用の現場で、実際にどのような判断が積み重ねられているのか。今回は、二人の言葉から、その具体的な姿を紐解いていく。平野さんは日々の現場対応を担うフロントとして、戸部さんはその判断を最終的に承認する立場として、それぞれの視点から賃貸管理という仕事を語ってくれた。

平野さん「間に入ることが、未然にボヤを消す」

最後まで、聞くということ。

入居者同士のトラブル対応で、平野さんが大切にしているのは「最後まで聞く」ことだった。

「入居者さんの場合は特に、きちんと相手の言いたいこと、言い分を細かく全て聞き取るっていうのが大事かなと思っていて。両者の意見をきちんと最後まで聞いて、あくまでも共同住宅にはなってくるので、妥協点というか、お互いに歩み寄って納得してねっていうところを見つけるのがいいかなとは思いながら対応しています」

生活音に関する相談は、日常的に寄せられるという。原因は一つに特定できないことが多く、だからこそ丁寧な聞き取りが欠かせない。連絡の手段も、電話やメール、アプリなど多岐にわたる。だからこそ、どの経路から連絡が来ても、同じ丁寧さで向き合うことを心がけているという。

「入居者さんからの連絡はアプリであったりとか、あとは緊急の場合は電話が来たり。基本的に連絡が来るときは困ってるかちょっと怒ってるかっていうのが多いので、そういう対応の難しさみたいなのはありますね」

「正直、クレーム関係は発生してからの対応になるので、事前に防ぐっていうのはやっぱりどうしても難しくて。ただ、設備関係とかだと、例えば夏が来る前にエアコンを使う前にきちんと点検をしてくださいっていうことを事前に案内はしたりしていて。そういったことで、設備関係のトラブルは、不満が大きくなる前に対策できるところではないかなとは思っています」

一番避けたいこと。

平野さんが最も避けたいのは、入居者同士が直接やり取りしてしまい、トラブルが大きくなることだという。

「一番避けたいことではあるので、どちらの意見もきちんと聞いて、自分の中でどのあたりであれば納得してもらえるのか、そういう着地点を考えながらヒアリングをしています。それぞれの意見をお伝えする、間に立てればいいんじゃないかなとは思っています」

オーナーへの説明も、平野さんが日々担っている役割のひとつだ。

「オーナーさんって、不動産投資の知識がすごいあるかというと、意外とそうではなかったりする方も多いんです。INVALANCEの場合は手軽に始められるからいいというものでもあるんですけど、その分そういった知識少ない方には特に、何かあった際には細かい部分からご説明しつつ、トラブルが発生した時にはご理解いただくというところを心がけています。設備の不具合であれば、直す費用はオーナーさんの負担になってくるので、そういった説明をすることが多いかなと思います」

他者に話すことで、気持ちが落ち着く人も少なくない。だからこそ、間に入ることそのものに意味がある、と平野さんは言う。

「私たちに話すことで割と落ち着かれる方もいらっしゃったりすると思うので、そういう意味でもやっぱり間に入るの大事かなと思ったりします」

ひとりで抱え込まず、いったんこちらに預けてもらう。その受け皿になることが、平野さんの仕事の核心にある。生活音のトラブルが直接の衝突にまで発展してしまえば、住み続けること自体が難しくなる。だからこそ、間に第三者が入るということ自体が、住まいの安心を支える、目立たないけれど欠かせない機能になっている。

戸部さん「守るとは、動かし続けること」

積み上げていく、という判断。

平野さんが日々の対応の最前線に立つ一方で、戸部さんはその判断を承認し、方針を示す立場にある。家賃改定について、戸部さんは迷いなくこう語る。

「数千円でもいいから、上げていくっていう積み上げが大事ってことですね。その一歩の交渉があったかどうかで、オーナー様にとっては何十年で見たときに大きな収入につながっていく。そういう重さというか、責任みたいなものを、みなさん感じながらやっている」

これまでの実績についても、静かな誇りをのぞかせた。

「オーナーさんに対しては、基本INVALANCEの契約がサブリース契約なので、年数が経つと家賃が下がりますよっていうのが一般的にあると思うんですけど、この中でいうと、今まで下げた実績っていうのはまだないんですね。逆に、今その家賃を上げていこうというところだと、まずオーナーさんの家賃を上げるためには、入居者さんの家賃を上げなきゃいけない。なので、退去されたお部屋という場面ではできる限り家賃を上げていますし、更新されるお客様でも、そのタイミングで上げていっているという形です」

交渉の場面では、客観的な材料を示すことを大切にしているという。

「資料は必ず作成していて、周辺相場のデータを示した上で交渉しています。それを見ると、今の家賃との差がわりと開いているので、上げやすい状況ではあるんです。もちろん、『今のままで十分足りているのに、なぜ上げるのか』とおっしゃる方もいるので、そういう場合は多少金額を下げることもあります。ただ、全体で見れば、着実に上がっていっているという実感はありますね」

オーナーに家賃を上げてもらうためには、設備面での後押しも欠かせないという。

「オーナーさんに家賃を上げてもらうには、こちらからも後押しが必要だと思っています。たとえば、古いエアコンをそのまま使い続けていると、どうしても見た目の印象がよくありません。そこで、設備投資をお願いして、家賃を上げられる状態を一緒につくっていく。維持するだけでなく、一緒に価値を育てていくという考え方で、家賃改定を進めています」

限られた時間の中での判断についても、正直に語ってくれた。

「正直、人数が結構限られてしまっているので、数千円の交渉に時間を割くかっていうとあまり長時間はかけられない。、2、3ターンのやりとりで、数千円でしたらだめだったら、じゃあちょっと次回更新時にまたお話しさせてくださいっていうので終わらせちゃう方ももちろんいらっしゃいますね」

平野さん・戸部さん「これからも、二人にしかできないことへ」

効率化で生まれる時間を、信頼関係の構築へ。

家賃改定の交渉と並行して、戸部さんたちが力を入れているのが、業務を支えるシステムの統合だという。

「営業が使っているシステムに、情報を統一しようというところで進めています。今はみんな部署ごとに違うシステムを使っているので、営業からしたら今どういう入居者さんがついているのっていうのが直接問い合わせをしなきゃ分からないという状況で。同じシステムを使えば、そういったことがその中で確認できるようになるかなと思います」

連絡手段の一本化も、今後の課題のひとつとして挙げてくれた。

「メールも来るし、アプリからも来るし、LINEからも来たりするので、そこも今後、連絡チャネルとして一本化していけたらというところは考えています。見に行く手間も省けますし、そこができるとだいぶ効率化につながると思います」

9割と、1割。

効率化についても、PMの考え方は一貫している。

「9割はシステムで効率化できたとしても、最後のやっぱり1割っていうのは絶対人間にはできない部分になると思うんです。それがオーナーさんの支えであったりとか、丁寧に寄り添ったりというところは、人間にしかできないところだと思うので、そういった時間を作れるようにするための効率化だと思っています」

「1割の本質」という言葉の背景についても、戸部さんは丁寧に補足してくれた。

「9割システムがやれば人間は1割でいいんだよ、というふうに聞こえるかもしれないんですけど、それを言い換えると、逆に言えば1割は絶対抜けないってことなんです。人間がやらなくてもいい業務がいっぱいあるという話ではなくて、その1割に、人間がやるべきことがあるっていう話が、ちゃんと伝わればいいと思っています」

効率化の先にあるのは、人がやらなくていい業務を減らすことではない。人にしかできないことに、より多くの時間を割くことだ。

「そこに生まれた時間によって、最後の一押しだったりとか、オーナーさんや入居者さんとの信頼関係の構築とかに時間が割けるようになれば、いい組織になるのかなっていうのは思ってますし、それを目指しています」

文章だけでは伝わらないものがある、と戸部さんは言葉を続けた。修繕の説明ひとつをとっても、メールやアプリでのやり取りでは届かない安心感が、電話や対面のやり取りの中には確かにある。数字で語られがちな資産価値の背後には、こうした一つひとつの対話の積み重ねがある。

インタビューの終盤、二人にこれからの賃貸管理について尋ねると、平野さんはこう語ってくれた。

「私からすると、さっき戸部さんがおっしゃったみたいに、やっぱりその1割の部分ですかね。オーナーさんの家賃を上げていくというのも、オーナーさんにとってはいいことですけど、入居者さんにとっては家賃が上がるということは避けたいことだと思うので、そこで納得してもらうっていうのはやっぱり普段の私たちが管理会社としてどれだけ信頼できるかというところにもつながってくると思います。そういったところに時間をかけられるように、事務的な業務をできるだけ効率化して、対人というところを優先的に対応できる環境になったらいいのではないかなと思います」

戸部さんも、同じ方向を見ていた。

「本質的には、将来の不安をどれだけ消していけるかというところが大事だと思っています。効率化でシステムに任せられる部分が増えていったとしても、そこはやっぱり人間にしかできない部分になると思うので、そこに向き合う時間をどれだけつくれるかが、これからも大事になってくると思います」

二人の話から見えてきたのは、「守る」という言葉の意味だった。じっと動かずに守るのではなく、日々の判断と対話を重ねながら、価値を動かし続けること。それこそが、賃貸管理という仕事の本質だ。建物が整えられ、日々の運用によってその価値が動かされ続ける。誰の正解にもなり切らない判断を重ねながら、賃貸管理の現場は、今日も静かに資産価値をつくっている。

この特集の記事一覧