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不動産が好きだから、
伝えられる価値がある。

# 18

人生の伴奏者であるために

不動産を買う、それは人生の伴奏者を選ぶこと。

Vol. 1

オーナー様と描く、次の未来

「ただの問い合わせ」を、「一生の信頼」へ。

これは、たった一本の電話から始まった、オーナー様と不動産会社社員の一年間の物語だ。用件のない定期連絡や、ふとした交流イベントを重ねる中で、担当者個人への信頼が、会社そのものへの信頼へと育っていく。フィクションという形を借りて、カスタマーサクセスの現場にある小さな積み重ねを描く。

電話の向こうで、名前を呼ばれた

ただの問い合わせのはずだった。

「あの、物件について相談したいことがあるんですけど」

芦田は受話器を握り直した。入社してまだ半年。電話の向こうの声は少し探るような、それでいて確認するような響きだった。

「はい、湊崎様。芦田です。本日はどのようなご用件でしょうか」

用件は、物件の運用についての質問だった。質問に正確に、誠実に答えていく。質問を整理していただいていたおかげで、五分もかからず終わる話だった。けれど電話を切る前に、湊崎はふと、こう付け加えた。

「いつも思うんですけど、こういう時にちゃんと名前で呼んでもらえるの、地味に嬉しいんですよね」

芦田はその一言を、しばらく忘れられなかった。

「何かお困りのことはありますか?」

最後に必ず、聞く言葉。

それから半年後。芦田は今度は自分から電話をかけた。前回の電話の最後に湊崎様が言った「またこういった相談をしたい」、この一言を芦田は忘れてはいなかった。

「湊崎様、いつもお世話になっております。その後、お持ちの物件のことや運用などで、何か気になることなどございませんか」

一瞬の間があった。湊崎は少し驚いたような声で答えた。

「あ、いえ、特に何もないんですけど……こういうの、律儀にかけてくださるんですね」

用件のない電話は、時に一番緊張する。何もなければ、それでいい。けれど「気にかけてもらえている」という実感は、用件の有無とは別のところに残る。芦田は先輩の東からそう教わっていた。

マニュアルにない一言を、足してみた

沈黙のあとに、本音がこぼれた。

ある日の電話で、湊崎はいつもより言葉少なだった。芦田は電話を切ろうとして、ふと踏みとどまった。

「湊崎様、何かお疲れのご様子でしたら、無理にお話しいただかなくても大丈夫ですので」

マニュアルにはない一言だった。数秒の沈黙のあと、湊崎はぽつりと言った。

「実は最近、ちょっと物件のことより、自分の仕事のほうがバタバタしてて。でも、物件のことは特に心配してないんです。ここに任せてるから」

その「任せてる」という一言に、芦田は胸の奥が熱くなるのを感じた。数字には残らない、けれど確かにそこにある信頼だった。

屋形船の上で、オーナー様と目が合った

「今日は来てよかった」その一言が全部だった。

初夏、会社主催による屋形船のオーナー交流イベント。芦田も運営として乗り込んでいた。

参加者は50名ほど。乗船して間もなく、湊崎の姿を見つけた芦田は驚いた。

「湊崎様、いらしてたんですね」
「芦田さんに一度、直接会ってみたくて」

船上では、不動産の話よりも、互いの趣味やちょっとしたクイズで盛り上がった。年齢も職業もばらばらのオーナー様たちが、同じ船の上でフラットに笑い合っている。その光景を見ながら、湊崎がぽつりと言った。

「今日は来てよかったです」

その一言に、芦田はこれまでのすべての電話が報われる気がした。

「また来月」が、当たり前になった

名前を覚えている、それだけで変わること。

イベント以降、湊崎とのやり取りは少し変わった。最初は「お世話になります」で始まっていた会話が、今では「あ、芦田さん」で始まる。

「今度、物件見学ツアーもあるんですよね?また参加しようかな」
「ぜひ。湊崎様がいらっしゃると、賑やかになりますから」
「じゃあ、また来月」

何気ないやり取りだった。けれど芦田は、この「また来月」という言葉が、以前は存在しなかったことに気づいていた。

クレームの電話が、鳴った日

逃げずに、もう一歩踏み込む。

すべてが順調だったわけではない。ある日、別のオーナー様から、対応の遅さについて厳しい指摘の電話が入った。

「前にお願いした件、返事がまだ来てないんですけど」

芦田は言い訳をせず、まず状況を確認し、いつまでに回答できるかを明確に伝えた。そのうえで、なぜ対応が遅れたのかを正直に説明した。

電話の最後、相手の声のトーンは少しだけ和らいでいた。

「まあ、ちゃんと説明してもらえたので。よろしくお願いします」

すべてのオーナー様が湊崎のように打ち解けてくれるわけではない。それでも、逃げずに一歩踏み込む姿勢だけは、変えないでいようと芦田は思った。

「あの…」ではなく「また来ちゃいました」と言われた

一つの接点が、一生の信頼になっていく瞬間。

秋のある日、湊崎から久しぶりに電話があった。

「芦田さん、また来ちゃいました」

湊崎はいたずらっぽくそういうと、続けた。

「実は、二件目の物件を検討しているんですけど、また相談に乗ってもらえますか」

問い合わせで終わっていたはずの一本の電話が、一年をかけて、次の相談の入口になっていた。「また来ちゃいました」。その軽さの中にこそ、遠慮のない関係が育っていることを、芦田は静かに、けれど確かな手応えを感じていた。

電話を切ったあと、次の一件が待っている

積み重ねてきた、その先にあるもの。

電話を切ると、芦田のデスクには次のオーナー様への連絡内容が表示されていた。特別なことは何もない、けれど誰かの「また来月」につながっているかもしれない一件。

芦田は受話器に手を伸ばした。

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